新ひだか町・二十間道路桜並木の樹勢回復措置
令和元年11月14日から15日にかけて、新ひだか町の二十間道路桜並木の樹勢回復措置を行いました。これは、新ひだか町から、同並木の桜の樹勢回復事業の業務委託を受けている樹木医金田正弘氏が、当社樹木医木戸口和裕の樹勢回復に関する提案を受け、新しい試みとして4本の桜を対象に行ったものです。
両日とも、低気圧の通過に伴って強風が吹き荒れる日でしたが、樹木医金田正弘氏、金田氏の御子息の紘幸氏、㈱環境整備公社から不動祐樹氏ほか2名、当社から岩井政人、樹木医木戸口和裕の7名で行いました。若くバイタリティ―あふれる作業員を要する㈱環境整備公社の働きで、強風の中でも作業が順調に進みましたことに、感謝申し上げます。
二十間道路は、宮内省の御料牧場の行啓道路として造成されたのがはじまりとされ、左右の道幅がちょうど二十間(約36m)あったことから「二十間道路」と呼ばれるようになったもので、この両脇に現在、約2,200本の桜が直線7kmに渡って植栽されています。
これらの桜が植栽されたのは、大正5年(1916)からの3年間、御料牧場の職員が近隣の山から、オオヤマザクラ(エゾヤマザクラ)やカスミザクラなどを移植したのがはじまりとなっています。
この二十間道路桜並木は、道内では松前町(まつまえちょう)松前公園とともに、さくら名所100選(平成2年(財)日本さくらの会)に選定されています。前者は、上述のとおり、道内に自生する桜が比較的長い延長の並木として植栽されており、後者はオオシマザクラ系の栽培品種を主体とした桜が福山城や寺町と一体となった公園に植栽されていることに特徴があります。
さて、現在、大正5年(1916)から数えて、本年(2019)で103年、老齢なオオヤマザクラを多く含むこの並木の桜は、樹勢の衰えや内部腐朽が進んでいる一方で、総延長の4割程度がコシジロトゲアシハバチによる食害地となっています。このような状況から、金田正弘樹木医は、平成29年度から3年間、受託した樹勢回復事業に取り組んでいます。
私どもで提案し、金田樹木医の指導のもとに行った措置の内容は次のとおり。
1 対象木:4本
花のトンネル桜並木3本(No.1、No.2、No.3)
エントランス広場寄りのハバチ被害木1本(No.4)
2 樹勢回復措置
(1)事前準備 ①地拵え(じごしらえ)
具体的には、地剥ぎ(細根への施肥やフルボ酸効果を高めるための下草の除去)で、事前に金田樹木医の指導のもと、㈱環境整備公社が行っていました。
(2)樹勢回復措置
①割竹縦穴式土壌改良法
樹木の根は、水のほか、酸素も必要です。このため、通気透水性の向上と施肥を兼ねた改良法を試みました。割竹は松前町の孟宗竹の間伐材を約1mに玉切りしたもので、竹の節を取ってパイプ状としたものを使用しています。
・対象となる桜1本につき、細根が多く分布する外側環状に8か所をアースオーガで1m掘削し、割竹を立て込みます。
・下水汚泥等を原料とした堆肥「ハイブリット」(㈱白滝有機産業(岡山市))を主体に、木質チップを特殊解繊処理して陽イオン交換容量を高め、「フジミン」を添加した土壌改良剤「DWファイバー」(製造元:大建工業㈱)、稚内珪藻頁岩粉砕物、混合土(金田樹木医が4種類のもの(鹿沼土、ピートモス、もみ殻燻炭、パーライト)をブレンドして使用しているもの)、これらを一定の割合で混合したもの(以下「混合ハイブリット」という。)を割竹の周囲に充填しました。
②縦穴式土壌改良法
この改良法と上記①との違いは、割竹を使用しないだけで、目的や掘削した穴への充填物は、同じです。
・対象となる桜1本につき、細根が多く分布する周囲に環状に8か所をアースオーガで1m掘削し、上記①と同じ「混合ハイブリット」を充填しました。
③施肥
ア.「混合ハイブリット」の散布
縦穴式は点的ですが、これは面的な施肥を薄く行うことを目的としています。
・対象木1本当たり「混合ハイブリット」24L程度を、根の分布域のうち、特に細根が多く分布する周囲に重点的に散布しました。
イ 「まるやま3号」の埋め込み
エアレーションを兼ねた穴に、遅効性の固形肥料を点的ではありますが、多くの箇所に埋め込みました。
・割竹縦穴式土壌改良法、縦穴式土壌改良法の掘削箇所の間に金棒で16穴以上開け、「まるやま3号」を2個/穴程度入れました。
④マルチング
マルチングは、下草の除去というよりもフルボ酸の持続的な供給を目的に行いました。「DWファイバー」はフルボ酸が製品の段階で添加されていますが、500倍希釈相当となるよう、さらに「フジミン」を添加するとともに、風による飛散防止のため、高い調湿機能が知られている稚内珪藻頁岩粉砕物を加えています。
⑤フジミン500倍希釈水の散布
フルボ酸のキレート効果による光合成量の増大などを目的に、フルボ酸が高濃度に含まれた植物活性剤「フジミン」の500倍希釈水を桜1本につき108L散布しました。
今回の樹勢回復措置は、①割竹縦穴式などの土壌改良、②堆肥の使用などの施肥、③フルボ酸の植物活性剤「フジミン」の使用、の3本柱、いわば「3本の矢」から成り立っています。
この3本の矢によって、百年を経過する老齢の桜が、その花芽を増やし、ヒコバエや気根による再生を促し、活力ある長寿桜となっていくことや、コシジロトゲアシハバチなどの害虫やてんぐ巣病の病気に負けない、樹木がもともと持っている防衛機能を高めることを期待し、今後とも、措置の効果を検証していきたいと考えています。