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室蘭市「幌萌の大桜」の樹勢回復・その2

2021年11月02日

1 概況
 令和3年(2021年)9月28日(火)、室蘭市幌萌町にある大山桜(エゾヤマザクラ)に金田正弘樹木医(日本樹木医会北海道支部長)が行う樹勢回復措置に、当社の樹木医木戸口和裕が二度目の参加をしました。昨年は9月29日でしたので、ほぼ同時期の措置となります。昨年から樹勢が急激に衰えたもので、昨年の措置日の翌日には、枯損した大枝の切除も行っていますので、次の2015年撮影の写真とは大きく異なります。

2015.05.03 金田正弘氏撮影

 「幌萌の大桜」の現状の写真は次のとおりです。この時期の正常な大山桜は葉がついているのが普通ですが、向かって右側の下枝だけしか葉がついておらず、多くは落葉しており、このことが大山桜の衰弱ぶりをうかがわせます。

今回の樹勢回復措置の着手前

 昨年の樹勢回復措置の効果は、地上部での新たな胴吹きやヒコバエといった形では表れてはいませんが、地下部では細根の新たな形成に寄与しているものと考えています。
 本年(2021年)7月は高温少雨で、樹勢の弱っているこの桜にとっては過酷な年となりました。水を求めて、根を大きく伸ばして生きようとしたのではないかと思っています。
 また、この桜には、干害だけでなく、エゾシカの食害という試練もあります。過去に胴吹きとヒコバエを出しており、胴吹きの方は高い位置なので被害はありませんが、ヒコバエの方は食害されています。この桜にとってのヒコバエは、いわば、なけなしの貯金を取り崩しての必死の生き残り戦略の一つだったと考えます。このような戦略に狂いを生じさせないように、シカの侵入を決して許さない柵の設置が必要と考えます。
 エゾシカは、苗木だけでなく、老齢木にとっても大きな脅威である、ということをこの現場から学ぶことができました。

 一方、「幌萌の大桜」と根の範囲で重なり合う「臥竜の霞桜」の方は、元気が良く、昨年の樹勢回復措置の効果も出ていると思われます。根株腐朽の進行で倒れたものと推定していますが、「一病息災」と言っているかのごとく、倒れてはいても懸命に元気で生きていこうとしているように見えます。

「臥竜の霞桜」

2 樹勢回復措置
 今回の樹勢回復措置には、金田正弘氏と木戸口和裕の2人で行いました。その内容は次のとおり。

①深さ0.8m程度の縦穴をアースオーガーで掘削し、樹冠の縁を意識してその内側と外側に環状に、「割竹縦穴式土壌改良法」は20箇所、「縦穴式土壌改良法」30箇所ほど行った。
②日高産堆肥、木質チップを特殊解繊処理しフルボ酸の植物活性剤フジミン®を添加した「DWファイバー」、ピートモス、樽前産火山灰、木質チップ炭に、稚内珪藻土(厳密には稚内珪藻頁岩粉砕物)にフジミン500倍希釈液を含侵させたものを投入し、それらを混合撹拌して、混合土として縦穴に充填するとともに、全体的にも散布した。
③穴あけ器による深さ20cm程度のエアレーションを根の範囲に格子状に多数行った。
④穴あけ器でできた穴には固形肥料(まるやま1号)1個投入し、その上に混合土を投入した。
⑤500倍希釈液を樹冠の縁付近に環状に重点的に散布した。

 昨年との違いは「割竹縦穴式土壌改良法」を行ったことです。金田正弘氏が昨年、松前町で竹の間伐をボランティアで行った際に入手された竹材を使用しています。間伐材のマテリアル利用になります。この割竹により、根への酸素の供給を確実にする狙いがあります。

使用した竹材
使用した土壌改良資材

 フジミンのフルボ酸には、土壌中のミネラル(肥料分)を樹体内に吸収されやすい状態で受け渡す「キレート作用」があります。
 稚内珪藻土(正しくは稚内珪藻頁岩粉砕物)には調湿機能があり、水分や養分をゆっくりと樹木に供給し、土壌の乾燥防止や肥料の緩効促進を期待しています。
 「DWファイバー」は、土壌の透水性、保水性の改善が期待されます。

土壌改良資材から混合土の作成
アースオーガによる縦穴堀り
割竹の設置と混合土の投入
エアレーション(金田正弘樹木医撮影)
固形肥料投入(金田正弘樹木医撮影)
フルボ酸の植物活性剤フジミン®500倍希釈液の散布(金田正弘樹木医撮影)
今回の樹勢回復措置の完了後

3 おわりに
 今回の措置によって2回目の大規模な土壌改良対策を行ったことになります。堆肥や木質チップ炭などを使用し、ミミズや土壌微生物が今回の縦穴などを起点に活動しやすくし、周辺の土壌を耕してくれることを期待しています。それは、団粒構造の土づくりにつながり、この桜の有する再生戦略を手助けしようとするものです。
 昨年から顕著となった「幌萌の大桜」の枯損は、その枯れ止まりが見通せない状況ではありますが、私としては来年の成長期での反転攻勢の兆しを期待しています。
 多くの方々に、「幌萌の大桜」が再び秀麗な姿を見せることができ、室蘭市の観光振興につながる一助になればと願っています。