第44回全国育樹祭会場・「苫東・和みの森」での保育作業について
1 会場の現状確認
令和3年(2021年)3月18日(木)、本道で開催される第44回全国育樹祭の「お手入れ行事」(10月9日(土)開催)の会場、苫小牧市字静川「苫東・和みの森」において、保育作業前の現状確認に当社樹木医の木戸口和裕が参加しました。
これは、北海道水産林務部全国育樹祭推進室から移植や保育などの作業の委託を受けている金田正弘樹木医からの要請により参加したものです。
現状確認は、いわば保育作業を行う上での下見で、この時に、同会場が抱えるいくつかの問題点を知ることができ、全国育樹祭推進室の式典施設グループの方々のご苦労がよくわかりました。
問題点の一つ目としては、保育の対象外の樹木も含め、エゾシカの食害が散見され、エゾシカの糞もいたるところで見られたことです。
2点目は、大山桜(別名エゾヤマザクラ)のヒコバエは、エゾシカ又はエゾユキウサギにより全て食害されていたことです。対象樹木にも食害防止ネットの隙間からこのウサギによる樹皮の食害も見られました。
3点目は、エゾヤチネズミの食害が1件見られたことです。エゾユキウサギの被害に比べて、極めて軽微ではあることが救いです。
4点目は、保育対象木の大山桜などの桜の幹には、食葉害虫であるマイマイガの越冬卵がついており、害虫対策が必要であることです。金田樹木医によると、同じく食葉害虫であるモンクロシャチホコの発生もある、とのことでした。
5点目は、一部には環状剥皮を行った移植したばかりの樹木もあることです。本年の成長期での根の十分な発達によって、夏枯れを乗り切る必要があると考えました。
問題点の1から3までは、北海道林業が抱える野生鳥獣被害問題そのものであり、4点目は桜の集植地特有の問題であると思います。
5点目は、同会場特有の問題で、当該地は第58回全国植樹祭(平成19年(2007年)6月24日開催)の会場でもあり、育樹祭の対象木の周辺は盛土を締め固めたもので、一見、柔らかなそうに見えても固いです。このため、堆肥などを用いて、ミミズや土壌微生物が多く生息するよう、土壌改良が必要であると感じました。
しかしながら、10月に本格的な「育樹」行事を控えており、この夏場を確実に乗り切れるようにすることを目的とすべきと思いました。
2 保育作業
令和3年(2021年)4月26日(月)、金田樹木医からの事前連絡があり、保育作業に参加しました。参加者は、金田樹木医とそのご子息紘幸氏と木戸口の3人です。
金田樹木医は、主に胴枯病や食害などの治療を行い、木戸口と紘幸氏は土壌改良を担当しました。
土壌改良資材は表面に薄く散布する程度とし、次の資材を撹拌混合したものを用いています。
①稚内珪藻土1袋分にフルボ酸の植物活性剤フジミン®500倍希釈液含侵したもの
②DWファイバー(木質チップを特殊解繊処理しフルボ酸を添加したもの)
③ピートモス1袋
④牛糞堆肥1袋
⑤砂川産堆肥2袋
⑥樽前産火山灰2袋
土壌改良の内容は次のとおり。
(1)穴あけ器で根の分布域にエアレーションし、上記土壌改良資材混合物を薄く散布する
(2)フジミン500倍希釈液を散布する
(3)高度化成肥料を微量散布する
なお、金田樹木医によると、昨年、既に対象木の一部には、フルボ酸の植物活性剤フジミン®を散布済みとのことでした。
結果論的で、我田引水的ではありますが、この4月の保育作業を総括すると、本年7月には、全道的に高温少雨であったため、対象木が夏を乗り切る上で効果が大きかったのではないかと思っています。
3 おわりに
第44回全国育樹祭のお手入れ行事は、令和3年10月9日(土)、オンラインにより、秋篠宮皇嗣同妃両殿下ご臨席のもと、執り行われたと聞いています。
コロナ禍での開催で、開催の1年延期になり、主催者や関係者の皆様におかれましては、北海道での日本最大の木育イベントの一つである全国育樹祭の実施にあたり、多くの苦労があったことと思いますが、滞りなく実施されたことに敬意を表します。
当社では、今回の全国育樹祭開催を契機として、育樹の大切さ、植樹の大切さを伝える木育の推進に、事業やCSR活動を通じて一層努めてまいりたいと考えています。