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幹周では北海道一の大山桜・浦河町の「オバケ桜」などの樹勢回復措置

2020年11月24日

1 はじめに
 令和2年(2020年)11月18日(水)、浦河町西舎の「優駿さくらロード」の奥にある日本中央競馬会日高育成牧場(以下「JRA」といいます。)の敷地内にある「オバケ桜」、「長寿桜」、「百年桜」の樹勢回復措置を行いました。
 浦河町から、「優駿さくらロード」の桜の樹勢回復事業の業務委託を受けている樹木医金田正弘氏が、「浦河町には、「優駿さくらロード」の桜以外にも観光資源となりうる貴重な桜がある。」と当社の樹木医木戸口和裕に話をしたことがきっかけとなって、金田樹木医が地元調整を行い、観光資源としての桜のブラシュアップを図る目的で、土壌改良を内容とする樹勢回復措置を行うことができました。

 参加者は、樹木医金田正弘氏、御子息の金田紘幸氏、金田樹木医の協力会社である㈱グリーンマインド代表取締役若生徹氏ほか5名、浦河町商工観光課真田一哉氏、当社から営業課長岩井政人、樹木医木戸口和裕の計11名で行いました。

優駿さくらロード(2020.05.06)

2 オバケ桜
 JRA所有の草地内にある、幹周490cm、樹高15.6mの大山桜の巨樹です。環境省の「巨樹・巨木林データベース」には登録済みで、「オオヤマザクラ」で検索すると、幹周では全国第3位となります。ちなみに1位は群馬県片品村にあるもので533cm、2位は長野県飯綱町にあるもので530cmです。当該データベース上では、北海道では幹周の一番太い大山桜となります。
 この桜の名は、浦河町の要請を受けてJRAが命名していますが、日高幌別川の支流オバケ川がすぐ近くにあるため、生立場所を示すとともに、この桜の巨大さも感じさせるという、絶妙なネーミングであると思っています。
 一昨年(2018年)に、この桜の存在と観察のための周辺整備の話が出て、昨年(2019年)11月に金田樹木医と協力会社の方々が、てんぐ巣病罹患枝の除去や根の周辺のササの除根、施肥を行い、桜の周辺に木製の立ち入り防止柵が設置されています。
 今回は、本格的な土壌改良として、木柵の内外に縦穴式土壌改良法等を行いました。アースオーガによる掘削では、ササの根が何度もじゃまをし、オーガのキックバックが何度か生じました。この桜の根は、ササの根と長年に渡って、水分の争奪などの戦いを続けてきたのだと感じました。ササから草本に変わるようになるには、あと3年程度は土壌改良が必要だろうと思っています。

オバケ桜(2020.05.06)
オバケ桜(2020.05.06)
縦穴位置のマーキング作業
R2土壌改良の完了

3 長寿桜
 JRA事務所や展望台に近い場所にある大山桜です。JRA事務所は、旧農林水産省の日高種畜牧場の敷地にあります。この日高種畜牧場は、戦後間もない昭和22年(1947)に開設された「農林省日高種畜牧場」が嚆矢で、その前身は、明治40年(1907)の「日高種馬牧場」まで遡ります。内閣直属の馬政局が、軍馬の資質向上のための種馬の改良繁殖を行うために「日高種馬牧場」を開設したものです。
 この桜は、この牧場の開設直後の明治末期に植栽されたものとすれば、百年を超す桜ということになります。
 この桜の傍らには、「うらかわの名木 第3号」の標識が設置され、この標識によると、幹周は305cm、樹高8.5mで、「毎年この桜を訪れ、幹を抱きパワーをもらって長生きした」というエピソードから、「長寿桜」と呼ばれるようになった、と伝えています。二本の大きな幹を持ち、腐朽が進んだ片方の幹からは気根が見られます。気根による新たな根と、今回の土壌改良によって、その名のとおり、長生きするよう願っています。

長寿桜(2020.05.06)
長寿桜(2020.05.06)
R2土壌改良の完了

4 百年桜
 メモリアルホール(旧農林水産省日高種畜牧場事務所)の入口にある桜で、長寿桜と100m程度離れています。
 傍らに「うらかわの名木 第5号」の標識が設置され、この標識によると、幹周は380cm、樹高12.0mです。
 この桜の生立している位置が建物の入口付近なので、植栽された可能性が高く、長寿桜と同様の時期だとすれば、その名のとおり、百年を超える桜です。
 道路に近いところに植えられ、道路側は道路由来の固い砂利層なので、反対側にしか根を展開せざるを得ないという条件ですが、逆境のなかでも力強く生きてきたことを感じさせる桜です。

百年桜(2020.05.06)
百年桜(2020.05.06)
R2土壌改良の完了

5 樹勢回復措置(土壌改良)の内容
 浦河町での桜の樹勢回復措置は、新ひだか町の二十間道路桜並木と同じ方法で行っています。

作業状況

 施工内容は、次のとおり。
①深さ0.6mから0.9mの縦穴をアースオーガで掘削し、樹冠の縁付近に環状に10か所程度の割竹縦穴式土壌改良法と、全体的に10か所程度の縦穴式土壌改良法を行った

アースオーガによる縦穴堀り(金田正弘氏撮影)

②フルボ酸の植物活性剤「フジミン®」(以下「フジミン」といいます。)500倍希釈液に、稚内珪藻土(厳密には稚内珪藻頁岩粉砕物)をどぶ漬けしたものを作成し、これに特殊解繊処理された木質ファイバーである「DWファイバー」、地元産堆肥、砂川産堆肥、木質チップ炭、ピートモス、樽前産火山灰との混合物(以下「混合土」といいます。)を作成した

DWファイバー(フルボ酸が添加されている。)
混合土の作成(金田正弘氏撮影)

③縦穴に割竹と混合土、または単に混合土を投入した

縦穴への混合土の投入(金田正弘氏撮影

④穴あけ器による深さ20cm程度のエアレーションを根の範囲に格子状に多数行った
⑤穴あけ器でできた穴には固形肥料(まるやま1号)1個投入し、その上に混合土を投入した
⑥混合土を根の範囲全体にも散布した
⑦高度化成肥料を散布した
⑧フジミン500倍希釈液を樹冠の縁付近に環状及び重点的に散布するとともに、根の範囲全体にも散布した

フジミン500倍希釈液の散布

 上記①、④での縦穴やエアレーションを多数行ったのは、根への酸素の供給量を増やすことを目的としています。
 上記②、⑧のフジミンには、土壌中のミネラル(肥料分)を樹体内に吸収されやすい状態で受け渡す「キレート作用」があります。
 上記②のDWファイバーには、製品そのものにフジミンが添加されており、土壌のCEC(陽イオン交換容量)を高めます。
 上記②の稚内珪藻土には調湿機能があり、水分や養分をゆっくりと樹木に供給し、土壌の乾燥防止や肥料の緩効促進を期待しています。

 6 終わりに
 今回の浦河町の桜は、旧新冠御料牧場の二十間道路桜並木の桜と同様に、馬産振興が関り、国の職員が関わった桜という共通点があります。
 浦河の旧日高種馬牧場と新ひだか町の旧新冠御料牧場、この二つの牧場は、今日の日高管内の軽種馬生産の発展の礎になりました。その歴史の生き証人としてのこれらの桜を保全していくことは、観光振興につながるものと思っています。
 JRA事務所の敷地内には、「西舎の大霞」「寄り添い桜」といった霞桜、北海道では珍しい「枝垂桜群」ともいうべき秘宝があり、これらも同様にブラッシュアップしていく必要があると思っています。
 大山桜、霞桜、枝垂桜(江戸彼岸)は花期がそれぞれ違います。また、優駿さくらロードには近年、大島桜系の八重の桜も植えられています。花観光が数日ではなく、数週間に渡って楽しめる名所として発展していくことを願っています。