室蘭市「幌萌の大桜」の樹勢回復措置
令和2年9月29日(火)、室蘭市幌萌町にある大山桜(エゾヤマザクラ)に金田正弘樹木医(日本樹木医会北海道支部長)が行う樹勢回復措置に、当社の樹木医木戸口和裕が初めて参加しました。この桜は、室蘭市の観光情報サイトで、「幌萌の大桜」、「胆振地方最大級、最古の大桜」と紹介されているものです。
この桜に2011年から関わっている金田樹木医から「今年になって、幌萌の桜の樹勢が急激に衰えた。花数も少なく、極めて危ない状態である。」との話を木戸口が聞き、新ひだか町の二十間道路桜並木で昨年から今年にかけて行った土壌改良法のように、堆肥やフルボ酸の植物活性剤「フジミン®」(以下「フジミン」といいます。)などを使用すれば、大山桜の古木であっても延命が可能ではないかと提案し、当社CSRの一環として樹勢回復措置の作業に加わったものです。
桜の所有者は、室蘭埠頭㈱で、(有)牧造園や金田正弘樹木医などが桜の保育を行っています。当該桜の計測を金田樹木医とともに行ったところ、胸高(地上1.3m)の幹周4.24m、樹高12.5mで、室蘭市の観光情報サイトのデータ(胸高の幹周:4.3m、樹高:16m)と比較すると、幹周はほぼ同じですが、樹高は3.5mほど低くなっていて、主幹もしくは枝の枯損があったことが窺えます。
当該桜は、比較的温暖な室蘭市にあって、9月末にしては落葉が進むのが早すぎるという印象で、もう少しの間だけでも糖分の蓄えを続けることすらできないほど樹勢が衰えているものと思われました。枝の枯損も進んでいるように見受けられ、翌日、金田樹木医や(有)牧造園の方々が高所作業車を使用して枯損枝の整理を行うとのことでした。
樹勢回復措置には、金田正弘氏、ご子息の金田紘幸氏、そして木戸口の3人で行いました。その内容は次のとおり。
①深さ0.8mから1mの縦穴をアースオーガーで掘削し、樹冠の縁を意識して木柵の内側と外側に環状に、それぞれ十数か所の縦穴式土壌改良法を行った。
②北海道砂川産堆肥、特殊解繊処理された木質のDWファイバー、ピートモス、樽前産火山灰、木質チップ炭に、稚内珪藻土(厳密には稚内珪藻頁岩粉砕物)にフジミン500倍希釈液を含侵させたものを投入し、それらを混合撹拌して、混合土として縦穴に充填するとともに、全体的にも散布した。
③穴あけ器による深さ20cm程度のエアレーションを根の範囲に格子状に多数行った。
④穴あけ器でできた穴には固形肥料(まるやま1号)1個投入し、その上に混合土を投入した。
⑤500倍希釈液を樹冠の縁付近に環状に重点的に散布するとともに、全体的にも散布した。
上記において、多数の縦穴などは、根への酸素の供給量を増やすことを目的としています。また、稚内珪藻土には調湿機能があり、水分や養分をゆっくりと樹木に供給し、土壌の乾燥防止や肥料の緩効促進を期待しています。
また、フジミンのフルボ酸には、土壌中のミネラル(肥料分)を樹体内に吸収されやすい状態で受け渡す「キレート作用」があります。
今回、アースオーガによる縦穴掘削では、柔らかい土壌で掘削は容易でした。金田樹木医などのこれまでの土づくりの成果であると思います。
金田樹木医によると、過去にこれほど大規模に施肥や土壌改良は行っていない、とのことでした。今回だけでなく、来年の春、来年の秋など、継続して回復措置を行うことより、多くの方々に、長い年月を物語る秀麗な姿を見せることができ、室蘭市の観光振興につながることを願っています。
なお、「幌萌の大桜」の近くには、「臥竜の霞桜」と呼ばれている霞桜があります。根本の主幹が腐朽して倒伏しているのにかかわらず、樹勢はそれほど衰えていないと見受けられました。倒伏しても生きようとするその桜は、人生の生き方を示しているような気がします。
この桜に対しても、大山桜と根がオーバーラップしていると考え、大山桜と同様に樹勢回復措置を行っています。