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胆振東部地震に起因した崩壊地での緑化試験による緑化状況・その2

2021年12月20日

1 はじめに
 当社では、地独)北海道立総合研究機構様(担当は森林研究本部林業試験場)から「大規模崩壊地森林造成実証試験その2委託業務」を受注し、令和元年(2019年)9月17日から9月20日まで、当該業務の現地での緑化工の施工を行っています。
 令和2年(2020年)6月4日に、緑化状況の現地確認の結果については既にホームページ上で報告済みですが、今回は、令和3年(2021年)6月8日と10月8日に実施した現地確認の結果を報告します。

航空緑化工・スラリーの散布のイメージ

2 緑化の概要
 当該業務の内容は、通常、航空緑化工としてヘリコプタ―で空中散布するスラリー(液体に固体を混ぜ合わせたもの)を、小面積で、かつ、点在する試験地に、人肩運搬し、人力で散布して、3箇所の緑化試験地(高丘8、高丘9、幌内)を設定するもので、2種類のスラリーを用いて行いました。

 2種類のスラリーの内訳は、一つは「ECOバインドAir工法」(以下「EBA」といいます。)、もう一つは「マルチプロテクションAir工法」(以下「MPA」といいます。)です。
 前者は当社のグループ会社である国土防災技術㈱が開発した工法で、後者は国土防災技術㈱と朝日航洋㈱が共同で開発した工法です。
 また、どちらにも地球環境大賞2019農林水産大臣賞受賞のフルボ酸の植物活性剤「フジミン®」(販売元:サンスイ・ナビコ㈱)を配合しています。

 EBAの「ECOバインド」は、もともと建築資材で土間や土壁に利用されていたもので、カルシウム、シリカやマグネシウムを主体とするミネラル系固化材で、当社では、仮設の安全対策工としての使用も推奨しているものです。この固化材は、高い耐浸食性を発揮するとともに、植物の生育に障害を与えにくく、北海道のような積雪寒冷地向きです。
 航空緑化工の場合、施工適期は種子が発芽する春ですが、当該試験地は様々な都合により秋発注で、秋施工です。

 一方、MPAは、自然公園等の無播種・少量播種に対応した工法で、当該業務では無播種とし、複数(マルチ)の有機質繊維(ワラ、木材ファイバー等)で被覆することで耐浸食性を向上させていますが、①周辺から飛散して来る種子の待ち受けであるため、確実な緑化の点でEBAよりも劣ること、②待ち受けた種子の根が発達しない前に、冬季を迎えるため、薄い膜である待ち受け材料が凍結融解に対抗できない可能性が高い、と判断していました。
 
 なお、3箇所の試験地でシカ柵ありに、EBA、MPA別に1.5×20.0mの区画が2区画設定され、さらに、幌内では、シカ柵がないところにEBAのみ1区画が設定されています。

3 2021.06.08現地確認結果の概要
 現地確認の参加者は、塩野康浩技術業務部長、青木大輔技師、木戸口和裕技術顧問の計3名で、社内緑化工研修を兼ねて行いました。

(1)EBA

高丘8(シカ柵あり)
高丘9(シカ柵あり)
幌内(シカ柵あり)
幌内(シカ柵なし)

・配合した芝類のハードフェスク、クリーピングレッドフェスク、ケンタッキーブルーグラスのうち、ハードフェスクのみが、確認できました。叢生型(株立ち)の根が地中に深く伸びているのではないかと思われます。
 ハードフェスクは9月中旬の播種で芽や根をだして凍結融解や夏の乾燥に耐えており、当該地では有効な緑化材料であることを示しています。
 高丘8では、ヤマハンノキや侵入してきたカラマツなどの木本に押され、専有面積が少ない現象が見られました。木本に圧倒されやすい点でも森林化を目指す緑化材料としての有効性を示していると考えます。

ハードフェスク

・配合したヨモギも各箇所で確認されました。高丘9の法頭では多数繁茂していました。ヨモギは各箇所で多数見られましたが、生育は水不足が原因と思われる黄化が一部見られました。地下茎を発達させるタイプであり、緑化材料としての有効性が高いと思われます。

ヨモギ

・配合したメドハギは、マメ科で根粒植物ですが、当該地ではハードフェスクに押されぎみで、水不足が原因と思われる黄化した葉も見られました。

メドハギ

・配合したマメ科の根粒植物のヤマハンノキは、土壌条件の「良」の高丘8(シカ柵あり)では多数見られ、土壌条件の「中」の高丘9(鹿柵内)では少なくなり、土壌条件の「悪」の幌内では1~2本程度しか見られませんでした。幌内のような土壌条件(泥岩層が近く、特に水持ちが悪い)では不向きという結果を示しています。

ヤマハンノキ・高丘8

・配合した根粒植物のヤマハギは、発芽率や成長は良くないものの、各箇所で安定的に生育しているのが確認されました。

ヤマハギ

・高丘8の試験区の内外でカラマツ、ケヤマハンノキ、ヤナギ類の実生が見られました。上部にはカラマツ林があり、そこから種子の供給があったと思われます。これらは、この胆振東部地域の崩壊地の早期復旧に際して、有効な造林樹種候補であり、EBAの実施においてこれらの樹種の地元種子の入手が可能であれば、配合が望ましいものと考えます。

カラマツ、エゾノキヌヤナギ

・ケヤマハンノキの実生は昨年(2020年)6月4日の現地確認では判然としませんでしたが、今回の現地確認では1.6mの高さに成長していました。配合したヤマハンノキでは、高いものでせいぜい80cm程度であり、これ比べて際立つ成長を示していました。当該実生は、緑化試験前に発芽していた可能性が高いと思われます。

高丘8のEBA施工地に侵入したケヤマハンノキ

・ケヤマハンノキにはハンノキハムシに食害されているものが多くありました。

ハンノキハムシ

・幌内(シカ柵なし)を含め、エゾシカの食害は確認されませんでした。また、全体的にノネズミ、ノウサギの被害も確認されませんでした。

(2)MPA
・MPAは、高丘8(シカ柵あり)、高丘9(シカ柵あり)、幌内(シカ柵あり、なし)の3試験区とも施工地から緑化材料の多くが流出したことから、昨年(2020年)6月4日の現地確認での評価と同様に、同工法は、積雪寒冷地の凍結融解に弱く、当該地で不向きであることには変わりがありません。

・高岡8では、材料の残骸を足掛かりにスミレ類やオオヤマザクラなどが見られたものの、残骸のないところにはアキタブキなどの侵入がありました。施工地外の自然侵入と大差がなく、土壌条件が良くて、種子がひっかかりやすい起伏があったことによるものと思われます。

・高丘9(シカ柵あり)にも材料の残骸がありましたが、種子の定着・生育の踊り場的な役割は果たしていませんでした。

(3)その他 ・試験施工区域の内外を問わず、ガリーの発達が見られ、特に幌内の試験区域外ではガリーの深さは1.7mに達していました。こうなると、土嚢筋工、丸太筋工、丸太柵工では山を治めることはできず、木製土留工や水路工の施工といった本格的な土木工事が必要です。

ガリーの発達・幌内

 2021.10.08現地確認結果の概要
  本年(2021年)7月は、高温少雨であったため、施工後、2回目の成長期を迎えた緑化試験地にとって、過酷な環境になったものと考え、このような時こそ、緑化工法の真価がわかるものと考え、社内緑化工研修を兼ねて現地確認を行いました。参加者は、岩井政人営業部長、李学強技師、高橋洋介技師、木戸口和裕技術顧問の計4名です。

(1)EBA
・高丘8(シカ柵あり)、高丘9(シカ柵あり)、幌内(シカ柵あり、なし)の計4か所のEBA試験区は、ともに7月の高温少雨による枯損などは見られませんでした。幌内のような土壌条件が厳しいところでも枯れが見られなかったことから、①ECOバインドなどの土壌基材の配合が良かったこと、②第1回目の成長期での根の発達が影響していること、が考えられます。

高丘8
高丘9

・高丘8、高丘9のEBAでは、施工地に目立った表面侵食は見られませんでした。

・幌内のシカ柵ありではEBAの施工地横のガリーが発達しつつあり、わずかであるが一部緑化された植生が消失しました。

幌内(シカ柵あり)ガリーの発達により一部施工地の植生の消失

・幌内のシカ柵なしのEBAは上からの表面侵食の土砂によって、施工地上部が埋まりつつありましたが、ハードフェスクがそれでも生育していました。

幌内(シカ柵なし)上部からの土砂流入状況

(2)MPA
・高丘8のMPAでは凹部などに自然侵入が見られましたが、高岡9、幌内では少ない状態でした。

5 現地確認結果からの考察
・厚真のようなテフラ崩壊の場合、高岡8での植生の侵入のように、緩勾配、テフラ厚、リルの程度、大雨がなかった、などの良い条件が揃うところであれば、寡雪地帯の凍結融解による凍上、エゾシカの食害などがあっても天然更新がガリー化に一時的に勝利しているように見えます。しかしながら、ガリーが発達すれば、成立した林分であっても流木化する恐れはあります。

・急傾斜なところでガリーを放っておくと、荒廃渓流化し、大規模なテフラの流出があり、水土保全機能回復は大幅に遅れるものと思われます。急傾斜地ではオーソドックスに、柵工、筋工とともに、航空実播工や植生マット工を行っていくことが王道と思われます。EBAの緑化試験地は、そのことを示唆していると考えます。

・芝類を入れることは、木本の生育が遅れるとの考えもありますが、「急がば回れ」で、まずは表面侵食を抑えていくことが、結果的に早期緑化につながるものと考えています。

・大きく発達したガリーは、土留工や谷止工の対応をせざるを得なくなるので、早めに航空実播工などの緑化工を行う必要があると考えます。

・厚真の場合、キーワードは、「テフラ崩壊」、「冬季の凍結融解と凍上」、「夏季の乾燥」、になるのではないかと思われます。
 なお、「エゾシカ・エゾユキウサギ・エゾヤチネズミの食害」は、北海道林業共通のキーワードであると考えます。

6 おわりに
 本年(令和3年)3月に、「豪雨災害に関する今後の治山対策の在り方検討会」によるとりまとめが公表されました。近年の気候変動に伴う降雨形態の変化により、激甚な災害が頻発していることを踏まえて、山地災害や洪水災害から国民の生命・財産を守っていくべき治山対策の方向性が示されて、森林の有する水土保全機能や洪水緩和機能の維持・向上のための対策が書かれています。

 胆振東部地震では、4,300ヘクタールに及ぶ崩壊地が発生時に出現しており、直ぐに森林化は困難ですが、まずは表面侵食に対応した森林土壌の形成が必要と考えています。
 コストパフォーマンスの面から、土壌基材を散布する省力化工法である航空実播工は、森林土壌の早期形成に有効な緑化工法の一つであることを、厚真の今回の緑化試験地は物語っているものと考えます。
 なお、地震によって生じた大規模崩壊地は、今後の大雨によって拡大する恐れがあります。復旧対策だけでなく、事前防災対策も含めて早期緑化が求められているものと考えます。